八ヶ岳連峰 天狗岳へ 30年10月2日~5日
2年ぶりの八ヶ岳だ
2日前に 日本列島を縦断した台風24号は
登山道に爪痕を残していた
予報では また次の25号が北上して来ているという
24号と25号の合間を縫って 天狗岳に登った
1日目 10月2日
夏沢鉱泉の車が 茅野駅に迎えに来てくれた
車は 桜平駐車場ゲートから 更に奥に進んでくれて
川の橋が流された所で 車を降りた
急場しのぎの 枝木で作られた仮橋を渡った
夏沢鉱泉に泊まるのは 今回で2度目だ
気配り十分のスタッフたちは 健在だった
おいしい食事は 手作り野菜
勿論 鉱泉のお風呂がある
2日目 10月3日
夏沢峠経由で 次の山小屋 根石岳山荘に向かった
夏沢峠までは 一部 谷の沢のなかを歩く
沢はえぐれていて
道の方も 前回のことを思うと 大分荒れていた
暫く歩いたところで
昨夜の夏沢鉱泉で一緒だった リハビリ中だという 老女に追いついた
ゆっくり、ゆっくり歩く彼女とは
6年前 北穂高岳の登山道で会ったことがある
その時の情景は今でも 印象深く残っていて
時折思い出すことがあった
我々は 北穂の南陵を登っていた
そろそろ 頂上が近いかなと思う所で 上から
一人の女性が リハビリ用の杖をつきながら
ゆっくりと降りて来た
見るからに弱々しく 痛々しそうだ
声を掛けると
腰を痛めて入院し 退院して2ヶ月になると言う
腰のリハビリのため
奥穂から回って来たのだと言う
そう言うと
また杖をついて ゆっくりと遠ざかって行った
そんなにまでして
そんな体で よくぞこんな場所に・・・・
われわれは只 茫然と
その女の人を見送ったのだった
老女(失礼! 私と同い年だった)が その人だったとは
根石岳山荘は 夏沢鉱泉と同じグループだ
到着後コーヒーを注文すると 連泊ということで
無料サービスだった
明日の天狗岳登頂に備え 展望風呂に入り
窓から見える 槍や穂高を見て のんびりと過ごした
風呂の方は 野趣溢れるしつらえで
些か緊張したのだが
3日目 10月4日
山荘を出るとすぐ根石岳に着く
目の前は東天狗岳だ
東天狗岳に到着し リュックを置き 西天狗岳に向かう
南に目をやれば 先ほどまでいた根石岳山荘が見える
切れ落ちた斜面に へばりつくように建っている
爆裂口の硫黄岳を見れば その向こうに 前回登った赤岳が見えてきた
西天狗岳から再び 東天狗岳に戻った
東天狗岳から北に少し下ると 眼下に美しい景色が広がっている
森の中に 今日泊まる黒百合ヒュッテも見える
道は二手に分かれるが 天狗の奥庭がある 左側の道を行くことにした
しかし ここからが
北八ヶ岳の本質だったのである
道は 石がゴロゴロしている
ゴーロ石ではない 大きめのイワイシだ
遠くから見るイワイシは
緑の木々に映えて 美しい景観を作っていたのだが・・
その大き目の石のうえに 上がったり 下りたり
間を通り抜けたりしながら 進む
足が短い者には なんともシンドイ道だ
後ろから来る 若い人達が
イワイシの上を
ヒョイヒョイと飛ぶようにして
追い抜いて行く
天狗さまのように
だから天狗岳・・・なのかな?
難儀しながらやっと 黒百合ヒュッテに降り着いた
行程時間は コース時間の倍以上だった
もう 合計年齢150才だよーと
天狗さまの声がした
4日目 10月5日
何時間熟睡したのかな
かつてこれほどまでの 「鼾」の大合唱に
会ったことがあるだろうか
それは 隣の大部屋から聞こえていた
黒百合ヒュッテ 5時半の朝食 7時出発
ルートは 中山峠 中山展望台 高見石小屋 白駒池バス停だ
11時8分発のバス 茅野駅行きに乗ろうと思う
このルートも案の定だ
中山峠を過ぎたころから イワイシが出てきた
岩石の急登が続く
しかも段差が大きい
展望台を過ぎると 今度は 岩石の下りだ
延々と続く
反対側から登って来る人も 口かずが少なく
とてもシンドそうだ
森一帯はシラビソの樹林で 美しい苔で覆いつくされている
神秘的な光景が広がっているのだが ゆっくりと眺める余裕はない
今は石に向き合い 滑らないように 慎重に下るだけ
北八ヶ岳に来たのは シラビソの森を歩きたくて・・・のはずだったのに
やっと高見石小屋に着いた
小屋で バスの出発時刻を確認すると
あと1時間しか余裕がない
小屋の人から
ここで休息を取り 一つ後のバスをと勧められた
が 行けるだけ 行ってみようということになった
緩い下り道は 沼かるんでいた
でも これまでの道のことを思うと 断然ラクチンだ
走るように バス停を目指した
到着した白駒池バス停では
黒百合ヒュッテで一緒だった 49才 福岡の男性が
「間に合って良かったですね」と 満面の笑みで迎えてくれた
彼は 途中の厳しい岩道でも
わざわざ引き返して来て
この先ではラクになるからと 声を掛けてくれた
山小屋で出会っただけの 他人同士なのに
まるで身内のように 気遣ってもらった
本当に ありがたい事だった
この度の登山は
優しさや 諦めない粘り強さを
出会った人に教えられた
この齢になっても 教えてもらうことは
山ほど有るものだ
また山に登ろう 元気なうちは
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