塩見岳から北岳へ
梅雨明け十日と言うけれど
まだ 梅雨明け宣言が出ていない 7月29日に我が家を出発
ところが 晴れ男と晴れ女なのか 山に行ってるあいだじゅう ずーと好い天気だった
はじめ 7月18日からの出発にしていたら
前泊の鹿塩温泉 塩湯荘から 「前を流れる 塩川の流れが異常なので 取りやめたらどうか」と
電話があり 雨が止むのを待って10日遅れの出発となった
実際 塩川の本流は天竜川で 他の支流では今回の豪雨で大被害が出ている
7月30日 登山1日目
塩湯荘の近く”塩の里バス停”7:30 鳥倉登山口行きに乗り
8:30 登山口着
9:00 登山開始
すぐに急登が始まる
高度を上げていくと 深い樹林になる
いろいろな鳥がさえづっていた
よく鳴いていたのは こおろぎの鳴き方に似ているメボソムシクイ
三伏峠(さんぷくとうげ)あたりまで ずーと鳴いていた
突然 ガア・ガア・ガア と言う鳴き声 が近くでした
見ると 目の前に美しいホシガラスが枝にいた
至近距離で見たのは はじめてだ
鳥たちのさえづりのなか 2時間30分で三伏峠小屋に到着
ここには水洗便所(有料)がある
三伏山 本谷山(ほんたにやま)を経て
15:40 塩見小屋到着
ここは 明日登る 塩見岳の直下に位置する
目を東に向けると これから向かう縦走の山々が連なっていた
遥か目的地の北岳は どの峰なのか
塩見小屋は小さな山小屋で 予約して行ったのだが超満員
着いてすぐに ビニールトイレの使用説明があった
割り当てられた場所は 出入り口ドアの すぐ側で
畳一枚にも満たない 二段ベッドの上段 まさに寝るだけ
おまけに ドアの開閉で一晩中眠れず とうとう朝を迎えた
7月31日 登山2日目
朝5時 日の出とともに 目の前にそびえる 塩見岳へ向けて出発
さすが百名山だ 前を行く人たちは 岩にへばりつきながら登っている
寝不足のためか 体調がなかなか整わず 後ろから来る人に追い越してもらって
マイペースでゆっくり登った
塩見岳西峰(3046.9m)に 2時間かかってやっとのことで到着
雲海の上に富士山が!!
富士山をこんな角度で見るのは初めてだ
富士山頂の両端に突起があり 均等なかたちをしている
以前 なにかの富士の絵を見たとき こんな富士山あるのかな と思っていたのだが
美しい富士だ!
急に元気が出てきた
富士山は やっぱり 私たち日本人の心だ
大きな岩の山容 塩見岳をうしろに見ながら北荒川岳へ
稜線を通るあいだ ずっと後方に見えていた塩見岳は樹林帯に入るとお別れ
樹林帯は 熊の平小屋まで続く
熊の平小屋は森の中から 沢の音とともに現れた
小屋の前にテラスがあり(農鳥岳が目の前にひろがる) 水が豊富で仙塩尾根のオアシスだ
昨日とは打って変わって 清潔で静かだ
樹林帯で出会った ひとり歩きの女性が 通過してきた熊の平小屋の様子を
「泊まりたかった」と話し 塩見小屋の方へ向かっていった
その日は宿泊者も少なく ぐっすりと眠れた
8月1日 登山3日目
今日も日の出とともに出発
樹林帯を過ぎると やがて農鳥小屋に道を分ける三国平
このあたりから ガレがはじまる
私たちはそのまま直進して 三峰岳(みぶだけ)へ
ガレと岩の連続だ
ここで仙塩尾根を離れて 間ノ岳へ
岩を伝って歩くのに大分慣れてきた頃 間ノ岳(3189m)頂上に到着
日本で4番目の高さを誇る
やがて中白根山に来ると 下のほうに北岳山荘が見えた
山荘に着いてみると 新築のりっぱな小屋で 建築費が何千万円もかかった お手洗いがあった
使用料 二人で千円払っておいた
北岳はもう目の前だ
八本歯のコルからの道と 出会うあたりから 登山者が多くなる
最後の登りは急で 滑りやすい
頂上からは 仙丈岳の全容が大きくせまり
向きを変えると足元は 岩の絶壁 バットレスだ
上からのぞきこむと足がすくむ
バットレスに向かい合うのは 鳳凰三山 オベリスクも見える
北に目をやると 昨年登った甲斐駒ケ岳(2967m)だ
北岳を出発してすぐ 岩かげに咲いている白い花 チョウノスケソウに出会えた
北岳にしか咲いていない キタダケソウは 時期的に諦めていたのだが
肩の小屋で すでに実が付いているのを見ることができた
最後の山小屋になる 肩の小屋では
となりに寝ている男の人の いびきがすごかった
眠れないので外にでてみると 星空の真ん中を 天の川が流れていた
今日は 旧暦7月8日だ
また プロの写真家 清水隆雄さんが同室だった
小屋には力作が 5.6点 展示されていた
ずぶの素人に プロの写真家の苦労は 押し計られるものではないが 話しをすこし聞かせてもらえた
相変わらず眠れないと思っていた2時頃 清水さんは写真を撮りに
身支度を整え さっと部屋を出て行った
肩の小屋 5時出発 もう下山するばかりだ
後ろを振り返ると 雲ひとつ無い群青の空に 北岳は朝日を受けて くっきりと立っていた
雪渓が終わるあたりまで下ると 広河原からのたくさんの人達が上がって来だした
この人たちの殆どが 肩の小屋か北岳山荘泊まりとなる ということは
今日の山小屋はスシヅメ状態だろう
9:50 広河原到着
バス回転所で 次のバスは何時かと聞いたら 臨時バスを出してくれるという
乗客は 私たち二人だけなのに
気を良くして 北沢峠に降り立ったが つぎに乗り換えの 長谷村交通バスの出発は 運行時間通りの13:00だった
13:50 戸台口(仙流荘前)着
車を 置かせてもらっている塩湯荘には 戸台口からタクシーで 国道152号線を通って帰ることにしていた
遅くとも 3時頃には宿に帰れると思っていたのだが
この度の災害で 分抗峠が土砂崩れのため 通行できないとのこと
最寄のJR伊那駅までタクシーで行き
JRに乗り替えて 途中 通過駅16
伊那大島駅でバスに乗り換え
塩湯荘にたどり着いたのは 夕方7時近くになっていた
今回の山行きで嬉しかったことは 温泉宿 塩湯荘を知ったこと
農家を移築して70年経つという 古い建物だが
塩川のほとりにあり 聞こえるのは川の水音だけ
料理は 川魚料理が中心
センスが良くて とても美味しい
そのうえ 若いご夫婦の誠実な対応は 自然で心が休まる
塩湯の温泉に ゆっくりつかり 巡った山々に思いをはせた
またこの宿に泊まり 南アルプス登山ができたら と思う
その夜は もちろん
料理を味わった後は ぐっすりと眠ったのでした
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